The importance of good leadership in a growing business

2025/03/01

「急ぎです」が通じない文化で、どう急がせるか?

「急ぎです」が通じない文化で、どう急がせるか?

「急ぎです」が通じない文化で、どう急がせるか?

── 緊急性を“伝える”ではなく、“作る”ための工夫

「ASAPでお願いします」
「これ急ぎなんで、今日中にもらえると助かります」
日本の仕事の現場なら、こうした一言でスピード感が共有される場面は多いと思います。

でも、海外チームと仕事をしていると、この“急ぎです”が全然伝わらない。
「了解」と言われたきり1週間経っても音沙汰なし。
こっちは火を噴いてるのに、あっちはバカンスの写真をInstagramに上げていたりする。

そんなとき、どうしたらいいんだろう?
今回は、実際にそんな場面でぶつかってきた経験から、「急がせる」というコミュニケーションの違いについて書いてみたいと思います。

そもそも、「急ぎ」の概念が違う

日本のビジネス文化では、「お願いしてすぐ返す」「依頼されたらすぐ動く」ことがある種の礼儀や信頼の証だったりします。
でも、たとえばフランスやイタリアの現場では、「何を優先すべきか」は自分たちで決めるという文化がベースにあります。

「急ぎって言われても、そっちの都合でしょ?」
「納期がいつかによって優先順位を判断するよ」
そんな空気感があるから、“急ぎ”という言葉に自動でスピードが紐づくわけではないんです。

「急いでください」は、通じない

これは何度も経験しました。
メールの最後に「ASAP(できるだけ早く)」と書いても、相手はまったく焦ってない。
「なるはやで」と伝えても、「Okay, I'll look into it soon」と返ってきて、それっきり。
一見やる気のある返事なのに、“soon”は2〜3日後、下手すると翌週という感覚です。

ここで強く催促すると、逆に「なんでそんなに急かすの?」という不信感につながってしまう。
“急がせる”こと自体が、関係性にヒビを入れるリスクでもあるのです。

では、どう急がせるか?

答えは、「急ぎだ」と伝えるのではなく、“自然と急いでもらえる構造を作る”ことだと思っています。

たとえば:

  • 納期ではなく“使われ方”を共有する
     「この資料、明日のクライアント打ち合わせで使います」
     「これ、今週の提案に組み込む予定です」
     ⇒ 具体的な“次の場面”が見えると、相手も動きやすくなります。

  • 小さな期限を切る
     「とりあえず明日の午後までに、ここだけ確認もらえますか?」
     ⇒ “全部やって”ではなく、“一部でも今できること”をお願いすると、スルーされにくい。

  • 相手の時間軸で逆算する
     「この週はパリコレで忙しいと思うので、その前の月曜までに軽くチェックだけもらえると助かります」
     ⇒ 相手のスケジュールを尊重した上で動いてもらう設計。

“急がせる”=“寄り添う”

たどり着いた結論は、急ぎの本質って、スピードを押しつけることじゃないということでした。
むしろ、「なぜそれが急ぎなのか」「それがどう役立つのか」を一緒に想像してもらう方が、はるかに伝わります。

そしてこれは、“急ぎの案件”に限った話ではなく、
「どうやったら自分のゴールが、相手にとっても意味のあるものになるか」という視点そのものなんだと思います。

最後に

「急ぎなんです」と伝えても、相手がそう感じなければ急ぎにはならない。
その当たり前のことを、海外チームとの仕事で何度も思い知らされました。

だからいまは、「急がせる」のではなく、
“急ぐ理由ごと一緒に動いてもらう”ことを意識しています。

言葉だけじゃなく、構造と関係性ごと組んでいく――
それが、“越境して仕事を進める”ということなんじゃないかと思っています。