
2025/07/01
── 非公式ショーという“現実的な越境”と、合同出展という選択肢
「海外に出たいんです」
ファッションブランドやデザイナーの方から、そんな声を聞くことがあります。
でも、いざ「海外進出」となると、頭に浮かぶのはきっとこんなワードではないでしょうか。
海外セレクトショップへの卸
グローバルECの立ち上げ
インフルエンサーとの提携
どれも魅力的なルートではありますが、現実には“いきなりそこに届く”わけではないことがほとんどです。
では、最初の一歩をどこから踏み出すのか?
その選択肢のひとつが、「非公式ショーを活用する」というルートです。
海外展開の“入口”は、ひとつじゃない
「まずは公式ショーを目指さないといけない」と考える方も多いかもしれません。
ですが実際には、海外展開において重要なのは、“どれだけ広く届くか”よりも、“どこで、誰に、どう刺さるか”というリアルな接点です。
そして、最初のステップとしてよく見られるのが次の3つのパターンです:
1|展示会スタート型(BtoB重視)
海外の展示会やショールームに出展し、バイヤーや業界関係者とつながる
商品・価格・ロジ面での完成度が求められる
デメリット:出展費用が高額になりがち。埋もれるリスクも大
2|グローバルEC&SNS拡張型(D2C重視)
海外ユーザー向けにECを構築し、SNSで直販アプローチ
世界観やクリエイティブ力が強ければじわじわとファンがつく
デメリット:信頼・導線・物流など、1から作るには負荷も大
3|非公式ショースタート型(体験重視)
ファッションウィーク期間中に行われる非公式イベントに参加
世界中のバイヤーやプレスが視察に訪れるため、直接的な出会いが生まれやすい
デメリット:演出や現場運営をすべて自力で担うのはハードルが高い
「非公式ショー」にも、2つの方法がある
非公式ショーに出展する際、多くのブランドが直面するのがこの問いです。
「自分たちで1から開催するべきか?」
「既存の合同イベントに参加すべきか?」
結論から言えば、最初の一歩としては“合同型”が非常に現実的な選択肢です。
合同型のメリットとは?
既存の非公式イベントに「合同出展者」として参加することで、以下のようなメリットがあります:
来場者ベースがすでにある
主催者のネットワークにより、バイヤー・ジャーナリスト・スタイリストなどが自然と会場に流れてくる構造があります。会場・演出・運営が整っている
ブース形式やランウェイ枠など、出展ブランドは表現に集中できます。コストが分散されている
単独開催よりも圧倒的に低コスト(数十万円規模)で挑戦可能です。「今いるレイヤー」で無理なく出られる
無理に“見栄を張らないといけない場”ではないため、自分たちの等身大の魅力を出しやすいのも特徴です。
合同型の注意点(デメリット)
もちろん、フェアに言えばデメリットもあります:
世界観が隣接ブランドと混ざりやすい
合同形式ゆえ、演出や空間での差別化が必要です。主催者のブランディングに左右される
イベント自体のクオリティが低いと、来場者の質や見せ方に悪影響を及ぼすことも。運営面で不透明な部分があることも
出展内容・タイムテーブル・搬入出などの情報がギリギリになるケースもあるため、フレキシビリティが求められます。
とはいえ、それらを事前に確認・交渉できれば、コストと成果のバランスが取れた“越境初動”の場としては、極めて有効な手段といえます。
「非公式=格下」ではない。むしろ、“意思表示”としての場
非公式ショーは、単なる公式の“代替”ではありません。
むしろ、「自分たちはこういう感性で、こういう温度で勝負したい」という世界観を伝える、能動的な場です。
そこには、「まだ発見されていない才能を探しに来ている人たち」がいます。
商談というより、“出会いと反応の現場”としての意味合いが強いのです。
最後に:自分に合った“越境の足場”を選ぼう
海外に出る=大きな覚悟がいる、と思われがちですが、
いまは 「小さく出て、濃く反応を得て、そこから広げる」やり方が主流になりつつあります。
非公式ショーへの出展は、その起点として非常にリアルで実践的な選択肢です。
そして、特に最初の一歩としては、既存の合同型イベントに参加することが、現地の熱に触れつつリスクを抑える方法として非常に有効です。
もし、「海外に出たいけれど、何から始めればいいか分からない」という状況にあるなら、
まずは合同型の非公式ショーという場で、“空気に触れてみる”ことから始めてみるのはいかがでしょうか。