
2024/12/01
非公式ショーとは何か?
パリファッションウィーク期間中、公式カレンダーに載っていない「非公式ショー」が数多く存在します。
小規模ブランドや若手デザイナー、あるいは独立系クリエイターたちが、アトリエやギャラリー、あるいは倉庫や屋上など、独自の空間でショーや展示会を開く――それが非公式ショーです。
パリコレという“巨大な本流”の傍らで、別の“水脈”として機能しているこの動き。
そこには「注目されたい」「買い付けにつなげたい」という商業的な思惑と、「自分の表現を、自分のやり方で伝えたい」という強い意志が同居しています。
非公式ショーの空気を一言で言えば、“自由と緊張が交錯する現場”。
そこには、既存の枠に収まらないエネルギーが満ちています。
非公式ショーがもたらす価値
非公式ショー最大の効用は、「自分たちの文脈を作れること」です。
多くのメディアやバイヤーが動き回る公式スケジュールの合間に、「あえてこの場所・この時間にやる」という選択そのものが、ブランドのメッセージになります。
・誰を呼ぶか
・どんな空間にするか
・どのような方法で見せるか
これらすべてが、「世界観の伝達手段」になる。
それゆえ、非公式ショーに出展するブランドは、「単なる服の発表」ではなく、「ストーリーとしての体験」を提供しようとします。
非公式ショーのリアルな現場
準備は想像以上にハードです。バックアップがない分、交渉・手配・集客・PR・当日の運営まで、自分たちでこなす必要があります。
・会場探しは1〜2か月前から始まり、場所によっては直前まで使用可否が確定しない
・機材やモデル、ヘアメイクの手配は全て自前。SNSや口コミでのリクルーティングが主流
・集客はDMやメディアリスト、関係者への直接アプローチが鍵になる
・リハーサル時間は限られ、本番一発勝負も多い
現場には、ギリギリまで何かを調整している緊張感と、それでも「やり切る」覚悟が漂っています。
それは、商業イベントというよりも、一種の“舞台芸術”に近い熱量かもしれません。
なぜ出展するのか?
では、なぜこれほど大変な非公式ショーに出展するのでしょうか。
それは、“ただの服”ではなく、“空気”を伝えるためです。
ブランドが持つ美意識、文化、姿勢。
それはECや展示会では伝わりにくいもの。
でも、空間として立ち上がったとき、人はそれを「体験」できます。
バイヤーが「雰囲気込みで買いたい」と感じるのは、服のデザインだけでなく、「このブランドと世界観を共有したい」という感覚があるから。
そしてメディアやインフルエンサーが取り上げるのも、「ストーリー性」が強いブランドです。
戦略としての非公式ショー
非公式ショーは、単なる代替手段ではありません。
むしろ、戦略的に“選ぶ”場所になっています。
限られた予算で最大限の印象を残すため
ブランドの独自性を際立たせるため
新しい市場や感度の高い層に直接届くため
最後に
非公式ショーに参加すると、「ブランドとは、服だけではない」と痛感します。
ストーリー、空気、空間、そして“誰と、どこで、どう共鳴するか”。
その場には、数字やスペックでは測れない価値が息づいています。
そして、その空気を全力で作ることこそが、世界におけるブランドの“入り口”になるのです。